民法総則の勉強③
法律行為の効力否定原因
意思表示の瑕疵
意思表示に問題があった場合に、法律行為の効力を否定しうるかが問題となる。
意思の不存在
意思が存在しないと分類されるもの。ただし、錯誤については必ずしもこの限りではない。
心裡留保(93条)
表意者が自らの意思で本心ではない意思表示をすること。
- 原則として有効。
- 真意でない意思表示をした表示者の帰責性が大きいことを根拠とする。
- ただし、相手方が悪意または善意有過失の場合には、相手方に保護すべき信頼がないため無効になる。
- 第三者との関係においては94条2項が類推適用される。
虚偽表示(94条)
表意者が相手方と通じて真意でない意思表示をすること。
- 無効。
- 外形上の行為に過ぎず、当事者間に法律行為を発生させる意思がないことが明らかで有効とする必要がないことを根拠とする。
- ただし、虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗することができない。
錯誤(95条)
表意者が表示内容と意思の不一致に気づかずに意思表示をすること。
条文上法律行為の要素に錯誤がある場合は無効とされている。
しかしながら、表意者と相手方双方の保護の調整の観点から、実際にどのような場合に無効とすべき錯誤として扱うかには争いがある。
錯誤の分類
表示の錯誤
表意者に意思が存在しないとされる錯誤
- 表示上の錯誤
- 言い間違いや書き間違いなど、表示手段によって発生する錯誤
- 数字の桁間違い等
- 言い間違いや書き間違いなど、表示手段によって発生する錯誤
- 内容の錯誤
- 表意者の考えたとおりの表示手段を用いたが、その表示手段のもつ意味を誤解していたために発生する錯誤
- 言葉や動作の意味を誤って理解している場合
- 表意者の考えたとおりの表示手段を用いたが、その表示手段のもつ意味を誤解していたために発生する錯誤
動機の錯誤
表意者にとって本意ではない意思表示となっているが、意思自体は存在する錯誤。
- 性質の錯誤
- 効果意思の対象である人や物の性質を関する錯誤
- 理由の錯誤
- 効果意思を持つに至った縁由に関する錯誤
錯誤無効の要件
- 意思表示の内容に関する錯誤であること
- 表示の錯誤は当然に内容に関する錯誤である
- 動機の錯誤は、以下に示す2要件を満たす場合に内容に関する錯誤となりうる
- 動機が相手方に表示(黙示でも可)されていること
- 大判大3・12・15
- 動機が意思表示の内容になっている場合
- 平成28・1・12 反社チェックは法律行為の内容とは認められない
- 動機が相手方に表示(黙示でも可)されていること
- 意思表示の内容の重要な部分に関する錯誤であること