やみの学習帳

ただの勉強ノートです。指摘・レビューもご随意に。

民法総則の勉強①

権利能力

権利の主体となることのできる資格のこと。法人格ともいう。

権利能力があれば権利を有し、義務を負うことが可能となる。

権利能力の始期

民法3条1項が「私権の享有は、出生に始まる」と定めている。

この条文から、出生のときから権利能力が始まることと、出生以外に権利能力の発生に必要な要件がないことがわかり

すべての人について権利能力があること(権利能力平等の原則)が導かれる。

ただし、出生をいつの時点とするかについては、母体から身体のすべてが出た時とする全部露出説(通説)と、一部が出た時とする一部露出説がある。

胎児の権利能力

胎児は出生前であるから、通常は権利能力を有しないものと考えられる。

しかしながら、いずれ権利能力者になることが予定されている人であるにもかかわらず、権利能力を全く有しないとすると出生のタイミングによって法律関係が大きく変動してしまうことがあり、適切ではないと考えられる。

そこで、特に影響の大きい相続・遺贈・不法行為を理由とする損害賠償については例外的に胎児をすでに生まれたものとみなすこととしている(出生の擬制)。

出生の擬制

  • 停止条件
    • 出生によって、出生前の時点における権利能力を遡って獲得するものとする説。
  • 解除条件
    • 出生前においても権利能力を有するが、死産によって遡って権利能力を失うものとする説。

判例には、胎児の損害賠償請求権を母親が代理して放棄する契約をしたが、契約の時点では胎児に損害賠償請求権が帰属しえない(停止条件説)としたものがある(大判昭和7・10・6)。

ただし、上記判例と同様の結論は、解除条件説を取って損害賠償請求権の帰属を認めた上で代理を否定することでも導きうる。

このような考えを背景に、解除条件説での処分行為の代理を認めないという見解もある。

権利能力の終期

自然人の権利能力は死亡によってのみ消滅する。

同時死亡の推定

死亡時刻の先後は、相続関係において大きな影響を及ぼしううる。

そこで、複数人の死亡時刻の前後が明らかでない場合、全員が同時に死亡したこととみなしている(同時死亡の推定)。

これにより、死亡の前後が不明である者は互いに相続人にならないこととなる。

この推定で不利益を受けるものは反対の事実を証明することで推定を覆すことができる。

失踪宣告

不在者(行方が知れず、帰ってくることが見込まれない者)について権利能力を認め続けると、

その利害関係者が望む法律効果を発生させられず不利益を被る恐れがある。

そこで、不在者の生死が不明な状態が一定期間継続(普通失踪では最後の連絡から7年、特別失踪では危難が去ってから1年)している場合に、

家庭裁判所は、利害関係者の請求によって不在者を死亡したものとすることができる(失踪宣告)。

失踪宣告の取り消し

失踪宣告の後に、宣告内容と事実が異なることが明らかとなる場合がある。

このようなときは、本人または利害関係者の請求によって失踪宣告の取り消しが可能である。

取り消し前に善意でされた行為は原則として効果を失わないが、財産に関しては現存利益の範囲で返還する義務を負う。