民法総則の勉強②
法律行為
法律行為の分類
- 契約
- 単独行為
- 1当事者の意思表示のみで成立する法律行為。契約の解除や遺言が該当する。
- 意思表示をするものが一方的に他人との法律関係を決定づけるもので、自由に行われることは望ましくないため、法律に根拠のある行為だけが可能である。
- 合同行為
- 同一の目的の複数の意思表示で成立する法律行為。
- 契約と異なり、一部の意思表示が無効でも合同行為全体が当然に無効になるわけではない(最判昭和54・2・23)
- 契約と合同行為を区別することには異論もある。
法律行為の成立と効力発生
個別具体的な権利変動要因に関しては、それぞれ個別具体的な規定が設けられることから、総論ではもっぱら意思表示について論じられる。
意思表示の成立
意思表示は伝統的に、(動機 -> ) 効果意思 -> 表示意識 -> 表示行為 というプロセスを経てなされると理解されている。
この成立過程に何らかの問題 - 例えば動機に関する誤解や、騙されて表示行為を行ってしまうこと、表示を誤ってしまうこと - などが発生した場合に、意思表示を有効なものとして扱うべきかが問題となる。
意思表示の成立の判断に対する立場
背景的な概念として2つの主義を考える事ができる(いずれか一方が正しいというものではない)。
- 意思主義
- 表意者の実際の意思を重視し、意思表示に問題が生じた場合に意思表示を無効とする考え方。
- 意思表示の機能のうち「意思実現機能」を優先させる。
- 表意者の自己決定を相対的に重視する。
- 相手方の信頼保護を相対的に軽視する。
- 取引安全の保護を相対的に軽視する。
- 表示主義
- 行われた表示行為を重視し、意思表示に問題が生じていたとしても意思表示を有効であるとする考え方。
- 意思表示の機能のうち「伝達機能」を優先させる。
- 表意者の自己決定を相対的に軽視する。
- 相手方の信頼保護を相対的に重視する。
- 取引安全の保護を相対的に重視する。
学説・判例の立場
- 効果意思の欠如について
- 意思表示の成立を妨げないとされ、争いはない。
- 表示主義的な立場が取られていると言える。
- 表示意思の不存在について
- 表示意識不要説
- 表示主義的見解
- 表示意識必要説
- 意思主義的見解
- 表示意識不要説
意思表示の効力発生
意思表示の伝達に両当事者間で時間差が生じる時、意思表示の効力はいつから発生するかが問題となる。
- 到達主義(原則)
- 発信主義では意思表示の相手方が知りえない時から意思表示が効力を有するものとなり、望ましくない。
- 本人以外の受領であっても、客観的にみて相手方への伝達が期待できるものが受領していれば到達とみなされる(最判昭和36・4・20)。
- 受け取り拒絶について、正当な理由がある場合には現実に受領された時を到達とみなす(大判昭和9・10・24)。
- 意思表示を受け取る時間ではない時間における到着は、翌営業開始時刻など通常受け取る時間を到達とみなす。
- 発信主義(例外)
- 契約の承諾は、申込をそのまま了承する意思表示であり、申込者(相手方)はすでに契約の内容を知っていると言えるので、発信後直ちに効力が生じる。
法律行為の解釈
法律効果を発生させるにあたって、意思表示の内容を確定させること。
法律行為の解釈の概要
- 狭義の解釈
- 当事者のした意思表示の内容を確定させること。
- 法律行為の補充
- 明らかとなった当事者の意思表示の内容で主たる部分に合意が認められるが、その他の部分に不足があって争いが生ずる場合に欠けている事項を裁判所が補充すること。
- 法律行為の修正
- 当事者のした意思表示の内容そのとおりに法律効果を認めるのが不適当な場合に、裁判所が正当な内容に修正すること。
分類ごとの法律行為の解釈
狭義の契約解釈
当事者間における契約の意思表示の内容を確定させること。
- 客観的解釈説(伝統的通説)
- 表示行為の有する社会的意味を客観的に明らかにするもので、表意者の内心の意思を問題にしない。
- 相手方の信頼保護、取引安全の保護、当事者の帰責性を重視する考え方と言える。
- 客観的解釈説の修正
- 伝統的通説に従うと、当事者同士の意思が社会的意味と異なった形で合致している場合であっても、当事者が社会的意味に拘束される恐れがある。
- 両当事者の意思が合致している場合にはその意味を優先させるべきであるとする説。
- 表示行為の有する社会的意味を客観的に明らかにするもので、表意者の内心の意思を問題にしない。
- 付与意味基準説
- 相手方の信頼は現実に有した正当な信頼を保護すれば足り、内容は当事者が与えた意味を重視すべきとする説。
- 両当事者の意思表示の内容が合致していればその意味で内容を定める。
- 一方の意思表示の内容が正当である場合には、その意味で内容を定める。
- 両当事者が正当である、または両当事者が正当でない場合には内容不確定で合意を不成立とする。
- 最終的には個別具体的判断が必要となり、その正当性の基準として客観的意味が判断基準となりうる。ただし、部分社会や当事者間における取引慣行などが存在する場合はそれらを考慮して判断する。
- 相手方の信頼は現実に有した正当な信頼を保護すれば足り、内容は当事者が与えた意味を重視すべきとする説。
契約の補充
狭義の契約解釈で明らかとならない事項を補うこと。