やみの学習帳

ただの勉強ノートです。指摘・レビューもご随意に。

番外編:乗鞍天空マラソン

昨年に引き続き 第14回 乗鞍天空マラソン に参加してきました。

 

乗鞍天空マラソンは、その名の通り乗鞍高原(約1450m)から乗鞍大雪渓のある雲上2600mの天空まで乗鞍エコーラインを駆け上がって降りてくる、フルマラソンでは最も過酷な一つといっても過言ではない大会です。 

昨年は初挑戦で全く余裕がありませんでしたが、今年は幾分余裕があったのでレポートしてみるなど。

移動

東京から乗鞍高原へのアクセスはお世辞にも良いとは言えません。

新宿-会場直通のバスツアー(往復12,000円 + 宿泊10,000くらい)を利用するか、新宿-松本-新島々-乗鞍高原を電車やバスで乗り継いで行く形となります。

団体行動が得意ではないのと、寄り道せずに現地に直行直帰でずっとバスに揺られるのはちょっとなぁという思いがあったので、自分は 白骨温泉・乗鞍高原ゆうゆうきっぷ (8000円) を利用してバスと電車を乗り継いで行きました。

 

* バス: バスタ新宿(08:55) ~ 松本駅(12:15)

* 電車: 松本駅(12:50) ~ 新島々駅(13:30)

* バス: 新島々駅(14:00) ~ 乗鞍観光センター(15:00)

 

と言った塩梅です。

これは新島々駅のすぐそばで眺めた梓川サービスエリアの梓川*1です。

なんかふつーに岸を歩いているとするっと手すりも高低差もなく川の真ん中に到達したんだけどこの川フリーダム過ぎないかな...。

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ゆうゆうきっぷ自体には白骨温泉乗鞍高原の区別がないので、新島々でどちらに行くかを申告してバスに乗ります。

そこから先は The 山といった酷道をバスでひたすらグネグネ。車窓から眺める梓湖の景色が美しい。

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乗鞍高原

乗鞍観光センターでバスを降り、そのまま建物内で大会受付を済ませます。

そこまで大きな大会でもないので混雑することもなくしゅっとゼッケンとTシャツを受け取っておしまい。

鈴蘭小屋

今回お世話になった宿は、乗鞍観光センターから徒歩3分のところにある鈴蘭小屋。

宇宙よりも遠い場所4話、南極観測訓練の舞台になったお宿です。

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南極観測隊員のABCのアレ。

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宿には温泉もあって、趣のある浴室に湯の花たっぷりの硫黄泉で素晴らしかった...。

善五郎の滝

観光センターから20分ほど歩いた場所に、善五郎の滝という観光スポットがあります。

「一般道・バス停からそんな好アクセスな場所に大したものはなかろう...」という偏見を持って観に行ったら、20メートルくらいのめちゃくちゃ立派な滝で怯みました。

善五郎よ、すまん。

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滝壺下からさらにもう一段落ちた小さな滝壺?もすごい美しさ。

大会

明朝5時半に宿で朝食をいただき、大会スタート地点の観光センターへ。

前日までの予報では降水確率も高かったけど、見事な晴れ。

スタート地点から20キロ先の折り返し地点を目視できる大会はここくらいだろうなぁ。

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およそ午前7時15分にスタート(ゆるい)して、まずは2.5kmほど乗鞍岳から後退します。

公式には「最初の5km≒2.5km往復は平坦」ということになっていますが、実際に走ってGPSで計測すると10メートルくらい下降しています。

これから1200メートルも登るというのに、わざわざ距離調整のために数キロ後退しつつ高度も下げるの、いい感じにクレイジーです。

そこから先はひたすらに登って、

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登って、

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登って、

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登って、

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登りきったあとは18kmを一気に下ります。

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下りは速度が出すぎるので折返し以降写真を取る余裕がなかった...。

そんなこんなであっという間にゴール。タイムは4時間19分ほどでした。

大会レポートのつもりが「登った」しか書けていないのはご愛嬌。

ゴール後は観光センター向かいの温泉を頂いて帰宅の途につきました。

 

そんなかんじで乗鞍岳を満喫しましたとさ、めでたしめでたし。

*1:青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ないを観た直後だった

刑法総論の勉強①

刑法総論の主要な概念

構成要件論

構成要件

刑法各則の条文に記述された、当罰的な行為態様を類型化したもの。

単に構成要件というときは、正犯の既遂を対象とする基本的構成要件を指し、共犯や未遂を対象とするものを修正された構成要件と呼ぶ。

構成要件に該当しない行為は、違法性や責任の判断の対象から外れ、処罰されない(罪刑法定主義的機能・保障機能)。

身分犯

刑法各則の条文に定める犯罪の主体の多くはすべての自然人であるが、

犯罪によっては主体に一定の属性を要求するものがあり、これを身分犯という。

例えば197条1項に定める収賄罪の構成要件は、公務員でなければ実現することができず、身分犯である。

他方、177条に定める強姦罪は男性を指す身分犯に思われるが、女性が男性を利用して実現することが可能な疑似身分犯である。

通説は身分犯を構成的身分犯と加減的身分犯に分類する。

結果

刑法においては2つの意味で用いられ、1つ目は行為客体の変化のことを指す。 この意味での結果を必要とする犯罪を結果犯、そうでない犯罪を挙動犯というが、実際には因果関係も要求されるため不正確である。 2つめは法益侵害を指し、実質的にすべての犯罪に要求されるもので、刑法学上はこちらの意味が重要である。

因果関係

処罰の対象となるふるまいと構成要件において要求される結果との間位に必要な関係のこと。 因果関係は、条件関係と相当因果関係の2つの因果関係で判断される。 条件関係は事実的・自然科学的な因果関係であり、相当因果関係は条件関係の存在を基礎として、当該条件関係が極めて異常なものでないかを考慮する因果関係である。

不作為犯

不作為により犯罪が実現される場合のこと。 不作為が処罰される明文の規定が存在するものを真正不作為犯とよび、保護責任者不保護罪などが該当する。 それ以外の明文の規定がない不作為犯を不真正不作為犯とよぶが、類推解釈に当たる・明確性の原則に反するといった批判がある。

違法性とその阻却

違法性

通説である客観的違法性論によれば、客観的事情に基づいて法規範に違反することであり、構成要件に該当する行為には違法性が推定される。

客観的違法性論の中でも、刑法の目的を法益保護に求め、法益侵害と危険の惹起を違法性の実質とする結果無価値論と、

社会倫理秩序の保護に求め、行為の規範逸脱性を違法性の実質とする行為無価値論とが存在する。

結果無価値・行為無価値二元論と結果無価値一元論には激しい対立がある。

違法性阻却

通説によれば構成要件に該当する行為は違法性が推定されることから、

違法性の判断とは実際には例外的に違法性を否定する事情の存在を判断することである。

このような事情を違法性阻却事由といい、正当行為・正当防衛・緊急避難・被害者の同意が代表的なものである。

正当行為

刑法35条に定める「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」とされる行為のこと。

法令の規定によって許容される法令行為と、正当な業務とみなされる正当業務行為がある。

具体例として、前者は警察官による逮捕監禁、後者には格闘技や医療行為が含まれる。

正当防衛

刑法36条1項に定める「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」とされる行為のこと。

正当防衛においては侵害から対比する義務がない点、防衛利益と侵害利益の厳格な利益衡量が要求されていない点で緊急避難とは性質を異にする。

相手方の不正の侵害に対する防衛行為であるという点から、緊急避難と比べて成立要件が緩和されている。

緊急避難

刑法37条1項に定める「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」とされる行為のこと。

緊急避難の成立には、他に危難を回避するために取りうる選択肢がなかったこと(避難行為の補充性)、および避難利益と侵害利益の衡量が求められる。

被害者の同意

被害者の有効な同意によって、行為の違法性が阻却されること。

結果無価値論の立場からは、被害者が保護すべき法益を放棄している、法益性の欠如の観点から説明される。

行為無価値論の立場からは、行為の社会相当性の判断要素として被害者の同意を含めて違法性阻却の可否を判断するとされる。

実質的違法性阻却

超法規的違法性阻却

明文の規定がない場合であっても、実質的観点から違法性が阻却されること。

結果無価値論の立場からは法益性の欠如または優越的利益の原理が、行為無価値論の立場からは社会相当性が違法性阻却の基準となる。

侵害された利益を自らの手で回復する自救行為が代表例であり肯定される余地があるが、最高裁判例に自救行為を肯定したものはない。

可罰的違法性

刑法には峻厳な制裁が予定されており、他の法領域において違法である行為や構成要件に該当する行為すべてを違法とするのではなく、

処罰に値する程度の違法性(可罰的違法性)の存在が要求されるという解釈。

他の公法上の違法行為であっても刑法上の違法としない(違法の相対性)、処罰に値しない極めて軽微な法益侵害を処罰しない(絶対的軽微)、といったものがある。

民法総則の勉強③

法律行為の効力否定原因

意思表示の瑕疵

意思表示に問題があった場合に、法律行為の効力を否定しうるかが問題となる。

意思の不存在

意思が存在しないと分類されるもの。ただし、錯誤については必ずしもこの限りではない。

心裡留保(93条)

表意者が自らの意思で本心ではない意思表示をすること。

  • 原則として有効。
    • 真意でない意思表示をした表示者の帰責性が大きいことを根拠とする。
    • ただし、相手方が悪意または善意有過失の場合には、相手方に保護すべき信頼がないため無効になる。
  • 三者との関係においては94条2項が類推適用される。

虚偽表示(94条)

表意者が相手方と通じて真意でない意思表示をすること。

  • 無効。
    • 外形上の行為に過ぎず、当事者間に法律行為を発生させる意思がないことが明らかで有効とする必要がないことを根拠とする。
  • ただし、虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗することができない。
    • 三者の範囲については争いがある
    • 善意は第三者になった時点で判断される
    • 無過失は要求されない。虚偽表示者の帰責性が大きいため。

錯誤(95条)

表意者が表示内容と意思の不一致に気づかずに意思表示をすること。

条文上法律行為の要素に錯誤がある場合は無効とされている。

しかしながら、表意者と相手方双方の保護の調整の観点から、実際にどのような場合に無効とすべき錯誤として扱うかには争いがある。

錯誤の分類
表示の錯誤

表意者に意思が存在しないとされる錯誤

  • 表示上の錯誤
    • 言い間違いや書き間違いなど、表示手段によって発生する錯誤
      • 数字の桁間違い等
  • 内容の錯誤
    • 表意者の考えたとおりの表示手段を用いたが、その表示手段のもつ意味を誤解していたために発生する錯誤
      • 言葉や動作の意味を誤って理解している場合
動機の錯誤

表意者にとって本意ではない意思表示となっているが、意思自体は存在する錯誤。

  • 性質の錯誤
    • 効果意思の対象である人や物の性質を関する錯誤
  • 理由の錯誤
    • 効果意思を持つに至った縁由に関する錯誤
錯誤無効の要件
  • 意思表示の内容に関する錯誤であること
    • 表示の錯誤は当然に内容に関する錯誤である
    • 動機の錯誤は、以下に示す2要件を満たす場合に内容に関する錯誤となりうる
      • 動機が相手方に表示(黙示でも可)されていること
        • 大判大3・12・15
      • 動機が意思表示の内容になっている場合
        • 平成28・1・12 反社チェックは法律行為の内容とは認められない
  • 意思表示の内容の重要な部分に関する錯誤であること

瑕疵ある意思表示

詐欺又は強迫による意思表示(96条)

民法総則の勉強①

権利能力

権利の主体となることのできる資格のこと。法人格ともいう。

権利能力があれば権利を有し、義務を負うことが可能となる。

権利能力の始期

民法3条1項が「私権の享有は、出生に始まる」と定めている。

この条文から、出生のときから権利能力が始まることと、出生以外に権利能力の発生に必要な要件がないことがわかり

すべての人について権利能力があること(権利能力平等の原則)が導かれる。

ただし、出生をいつの時点とするかについては、母体から身体のすべてが出た時とする全部露出説(通説)と、一部が出た時とする一部露出説がある。

胎児の権利能力

胎児は出生前であるから、通常は権利能力を有しないものと考えられる。

しかしながら、いずれ権利能力者になることが予定されている人であるにもかかわらず、権利能力を全く有しないとすると出生のタイミングによって法律関係が大きく変動してしまうことがあり、適切ではないと考えられる。

そこで、特に影響の大きい相続・遺贈・不法行為を理由とする損害賠償については例外的に胎児をすでに生まれたものとみなすこととしている(出生の擬制)。

出生の擬制

  • 停止条件
    • 出生によって、出生前の時点における権利能力を遡って獲得するものとする説。
  • 解除条件
    • 出生前においても権利能力を有するが、死産によって遡って権利能力を失うものとする説。

判例には、胎児の損害賠償請求権を母親が代理して放棄する契約をしたが、契約の時点では胎児に損害賠償請求権が帰属しえない(停止条件説)としたものがある(大判昭和7・10・6)。

ただし、上記判例と同様の結論は、解除条件説を取って損害賠償請求権の帰属を認めた上で代理を否定することでも導きうる。

このような考えを背景に、解除条件説での処分行為の代理を認めないという見解もある。

権利能力の終期

自然人の権利能力は死亡によってのみ消滅する。

同時死亡の推定

死亡時刻の先後は、相続関係において大きな影響を及ぼしううる。

そこで、複数人の死亡時刻の前後が明らかでない場合、全員が同時に死亡したこととみなしている(同時死亡の推定)。

これにより、死亡の前後が不明である者は互いに相続人にならないこととなる。

この推定で不利益を受けるものは反対の事実を証明することで推定を覆すことができる。

失踪宣告

不在者(行方が知れず、帰ってくることが見込まれない者)について権利能力を認め続けると、

その利害関係者が望む法律効果を発生させられず不利益を被る恐れがある。

そこで、不在者の生死が不明な状態が一定期間継続(普通失踪では最後の連絡から7年、特別失踪では危難が去ってから1年)している場合に、

家庭裁判所は、利害関係者の請求によって不在者を死亡したものとすることができる(失踪宣告)。

失踪宣告の取り消し

失踪宣告の後に、宣告内容と事実が異なることが明らかとなる場合がある。

このようなときは、本人または利害関係者の請求によって失踪宣告の取り消しが可能である。

取り消し前に善意でされた行為は原則として効果を失わないが、財産に関しては現存利益の範囲で返還する義務を負う。

民法総則の勉強②

法律行為

法律行為の分類

  • 契約
    • 複数の意思表示の合致により成立する法律行為。
    • 私的自治の原則から、契約は私人相互の自主的な調整に委ねられるところが大きく、広範な自由が認められてきた(契約自由の原則)。
  • 単独行為
    • 1当事者の意思表示のみで成立する法律行為。契約の解除や遺言が該当する。
    • 意思表示をするものが一方的に他人との法律関係を決定づけるもので、自由に行われることは望ましくないため、法律に根拠のある行為だけが可能である。
  • 合同行為
    • 同一の目的の複数の意思表示で成立する法律行為。
    • 契約と異なり、一部の意思表示が無効でも合同行為全体が当然に無効になるわけではない(最判昭和54・2・23)
    • 契約と合同行為を区別することには異論もある。

法律行為の成立と効力発生

個別具体的な権利変動要因に関しては、それぞれ個別具体的な規定が設けられることから、総論ではもっぱら意思表示について論じられる。

意思表示の成立

意思表示は伝統的に、(動機 -> ) 効果意思 -> 表示意識 -> 表示行為 というプロセスを経てなされると理解されている。

この成立過程に何らかの問題 - 例えば動機に関する誤解や、騙されて表示行為を行ってしまうこと、表示を誤ってしまうこと - などが発生した場合に、意思表示を有効なものとして扱うべきかが問題となる。

意思表示の成立の判断に対する立場

背景的な概念として2つの主義を考える事ができる(いずれか一方が正しいというものではない)。

  • 意思主義
    • 表意者の実際の意思を重視し、意思表示に問題が生じた場合に意思表示を無効とする考え方。
    • 意思表示の機能のうち「意思実現機能」を優先させる。
    • 表意者の自己決定を相対的に重視する。
    • 相手方の信頼保護を相対的に軽視する。
    • 取引安全の保護を相対的に軽視する。
  • 表示主義
    • 行われた表示行為を重視し、意思表示に問題が生じていたとしても意思表示を有効であるとする考え方。
    • 意思表示の機能のうち「伝達機能」を優先させる。
    • 表意者の自己決定を相対的に軽視する。
    • 相手方の信頼保護を相対的に重視する。
    • 取引安全の保護を相対的に重視する。
学説・判例の立場
  • 効果意思の欠如について
    • 意思表示の成立を妨げないとされ、争いはない。
    • 表示主義的な立場が取られていると言える。
  • 表示意思の不存在について
    • 表示意識不要説
      • 表示主義的見解
    • 表示意識必要説
      • 意思主義的見解

意思表示の効力発生

意思表示の伝達に両当事者間で時間差が生じる時、意思表示の効力はいつから発生するかが問題となる。

  • 到達主義(原則)
    • 発信主義では意思表示の相手方が知りえない時から意思表示が効力を有するものとなり、望ましくない。
    • 本人以外の受領であっても、客観的にみて相手方への伝達が期待できるものが受領していれば到達とみなされる(最判昭和36・4・20)。
    • 受け取り拒絶について、正当な理由がある場合には現実に受領された時を到達とみなす(大判昭和9・10・24)。
    • 意思表示を受け取る時間ではない時間における到着は、翌営業開始時刻など通常受け取る時間を到達とみなす。
  • 発信主義(例外)
    • 契約の承諾は、申込をそのまま了承する意思表示であり、申込者(相手方)はすでに契約の内容を知っていると言えるので、発信後直ちに効力が生じる。

法律行為の解釈

法律効果を発生させるにあたって、意思表示の内容を確定させること。

法律行為の解釈の概要

  • 狭義の解釈
    • 当事者のした意思表示の内容を確定させること。
  • 法律行為の補充
    • 明らかとなった当事者の意思表示の内容で主たる部分に合意が認められるが、その他の部分に不足があって争いが生ずる場合に欠けている事項を裁判所が補充すること。
  • 法律行為の修正
    • 当事者のした意思表示の内容そのとおりに法律効果を認めるのが不適当な場合に、裁判所が正当な内容に修正すること。

分類ごとの法律行為の解釈

狭義の契約解釈

当事者間における契約の意思表示の内容を確定させること。

  • 客観的解釈説(伝統的通説)
    • 表示行為の有する社会的意味を客観的に明らかにするもので、表意者の内心の意思を問題にしない。
      • 相手方の信頼保護、取引安全の保護、当事者の帰責性を重視する考え方と言える。
    • 客観的解釈説の修正
      • 伝統的通説に従うと、当事者同士の意思が社会的意味と異なった形で合致している場合であっても、当事者が社会的意味に拘束される恐れがある。
      • 両当事者の意思が合致している場合にはその意味を優先させるべきであるとする説。
  • 付与意味基準説
    • 相手方の信頼は現実に有した正当な信頼を保護すれば足り、内容は当事者が与えた意味を重視すべきとする説。
      • 両当事者の意思表示の内容が合致していればその意味で内容を定める。
      • 一方の意思表示の内容が正当である場合には、その意味で内容を定める。
      • 両当事者が正当である、または両当事者が正当でない場合には内容不確定で合意を不成立とする。
    • 最終的には個別具体的判断が必要となり、その正当性の基準として客観的意味が判断基準となりうる。ただし、部分社会や当事者間における取引慣行などが存在する場合はそれらを考慮して判断する。

契約の補充

狭義の契約解釈で明らかとならない事項を補うこと。

  • 法規範による補充
    • 任意規定による補充(91条)
      • 意思表示が不明瞭な場合に一定の意味で解釈したり、不足がある場合に補充したりするための規定がある場合はその規定で補充する。
    • 慣習による補充(92条)
      • 任意規定と異なる慣習がある場合で、当事者がその慣習に従う意思を有していたと認められるときは慣習が優先する。
      • 判例には、慣習に従う意思について、慣習に反対の意思を示していなければ存したものと認めるものがある。
  • 契約の趣旨に則した補充
    • 契約の主要部分を維持することを念頭に、その他の不足している事項を契約の趣旨に則した形で補充することがある(補充的契約解釈)。

刑法総論②

共犯論

共謀共同正犯

犯罪の謀議に参加したが、その実行に参加しなかったものを共同正犯として扱うこと。 判例は共謀共同正犯を認めるが、犯罪の実行に参加しなかったものに対する責任をどのような根拠で肯定し、また教唆・幇助との差をどのように定義するか。

共同意思主体説

共謀共同正犯肯定説の有力説。 罪を犯すために共犯者が同心一体化して共同意思主体という超個人的団体を形成する。 その構成員が犯罪の実行行為を行った場合、その犯罪の効果は共同意思主体に帰属する。 その責任は、民法上の組合の活動について組合員全員が責任を負うのと同様に、共同体を形成した全員に割り振られる。 したがって、共同意思主体の形成に関与したものは共同正犯となるとする説。

批判

  • 団体責任を認めるべきではない
    • 教唆・幇助として処罰されても団体責任の存在は否定出来ないのでこの点での批判は妥当でない。

間接正犯類似説

共同意思主体に拠らない共謀共同正犯肯定説の有力説。 共謀が成立した場合、実行担当者は自分の一存で裏切ることができないという拘束を受け、 背後に仲間が控えていることで違法行為をあえて犯すことに対する道義的抑止力、規範的生涯を容易に克服する。 この場合、背後者*1の利用行為は間接正犯の利用行為と同様の実体があるとする説。 練馬事件判決(最大判昭和35・5・28刑集12・8・1718)以降有力説の一つとなった。 * 元来は背後者と実行者を対等な関係としても成り立つ説であったが、後に背後者による支配を明示的に捉え、「本人が共同者に実行行為をさせるについて自分の思うように行動させ本人自身がその犯罪実現の主体になったと言えるような場合」に限定して共同正犯となるとする主張(優越支配共同正犯説)が現れた。

機能的行為支配説

犯罪事象全体の実現において欠かすことのできない行為をしたものは、犯罪事象全体を支配していたものと捉えて共同正犯を認める説。

重要な役割説

犯罪において、実行行為に準ずる「重要な役割を果たしたもの」を共同正犯とする見解。 共同正犯と間接正犯が異なることを前提として認め、広義の共犯(教唆・幇助を含む)の中で重い処罰に値するのはどのような者であるかを論ずる説。 さらに、重要な役割説を支持しつつも行為者の主観を重視し正犯意思を考慮に入れる事を説く見解も存在する。

批判

  • 教唆もまた重要な役割と言えるため、役割の重要度での教唆と共同正犯の区別は困難である
  • 役割の重要性の判断が総合考量に依るとすると、処罰範囲が不明確である。

*1:他人の行為を利用して自己の犯罪を実現しようとする者

刑法総論①

因果関係論

一定の結果の発生が犯罪成立の要件とされているとき、処罰対象とされる行為とその結果の間にどのような関係を要するかを明らかにしようとするもの。 行為と結果の間の関係性が問題。

「因果関係」は結果犯における構成要件要素である。

刑法における因果関係論は、結果発生を理由としてより思い違法性を肯定できるかどうかの問題である。 違法論の対立が直接に反映される。

  • 条件説
    • 条件関係があれば刑法上の因果関係が肯定される. 旧説.
  • 相当因果関係説
    • 行為から結果が発生することが経験上一般的であるときに限って因果関係が肯定される. 通説.判例(やや古)
  • 危険の現実化
    • 行為の危険性、誘発、死因の形成等の具体的なファクターを総合的に考慮する. 近年の判例/学説

雑多な用語メモ

  • 行為無価値(論)
    • 刑法が規定する行動準則に反することによって受ける否定的評価
    • すべての犯罪には行為無価値を要する。
  • 結果無価値(論)
    • 行為による結果によって受ける否定的評価
    • 一部の犯罪は行為無価値に加えて結果無価値を要する。
  • 挙動犯
    • 結果無価値が構成要件要素でない犯罪。
      • 住居侵入罪、暴行罪等
  • 結果犯
    • 結果無価値が構成要件要素である犯罪。